ミンツ・パイはショートクラスト・ペイストリーの中にミンツ・ミートと呼ばれる、スパイスの入った甘いジャムのようなドライ・フルーツを入れて焼いたもので、イギリスのクリスマスには欠かせない伝統的な季節のお菓子です。クリスマスが近づくと、市販のものお店にたくさん並びますし、ミンツパイとスパイスのきいた温かいワイン(Mulled Wine)でもてなすイベントが催されたりしてクリスマスの雰囲気が盛り上がります。
イギリスにおけるミンツ・パイの歴史はとても古く、13世紀に遠征した十字軍が中東から持ち帰った、スパイスとドライ・フルーツが入ったお肉のレシピが起源だとされています。昔のミンツ・パイは、今のものよりはかなり大きく、形も長方形だったことから、棺(Coffin)などとも呼ばれたそうです。それが歴史とともにその形や大きさも変化し、16世紀のチューダー朝の頃からはクリスマスに食べられるようになり、現在の甘くて小さめなミンツ・パイになったのはビクトリア朝(19世紀後半~20世紀初頭)以降だそうです。
ここで紹介しているレシピは、リネットさん本人のオリジナル・レシピです。家族に伝わるレシピを毎年少しずつ工夫していった結果、このレシピになったそうです。全粒粉で作ったペイストリー生地がサクサクと歯ごたえがよく、中のミンツ・ミートは市販のものに比べると甘さが少なく、チェリーが丸ごと入っています。チェリーにあたると、ラッキー!です。
ミンツ・パイに関わる迷信はいくつかあって、12夜(Twelve nights:クリスマスの日から12日間)に毎日1つずつ、別々の家のミンツ・パイを食べると幸運な新年が来る、勧められたミンツ・パイを断ると不幸が来る、ミンツ・ミートを作るとき反時計まわりに混ぜると不幸な一年になる、またミンツ・パイをナイフで切って食べると大不幸・・・らしいです。
いずれにせよ、クリスマスの到来を楽しむ最高のお菓子です。Mulled Wine以外にも、ポート・ワイン( Port)やシェリー酒 (Sherry)と一緒に頂くのも最高ですし、リネットさんはこれらと共に各種チーズやフルーツも一緒にもてなしてくれます。
材料
<ミンツ・ミート> (ドライ・フルーツのミックス)
・レーズン 225g
・サルタナ・レーズン 225g
・ドライ・カレント 225g
・ライト・ベジタリアン・スエット(Light Vegetarian Suet)
・砂糖(できればデメララ・シュガーDemerara Sugar : ざらめのような砂糖)
・胡桃(砕いたもの) 125~225g(好みに応じて)
・料理用りんご(酸味のあるもの) 450g
・摩り下ろしたレモンの皮と果汁 1~2個分(表面をきれいに洗ったもの)
・摩り下ろしたオレンジの皮と果汁 1個分 (表面をきれいに洗ったもの)
・ドレン・チェリー 200g
・シナモン 小さじ山盛り1
・ナツメグ 小さじ山盛り1
・ミックス・スパイス 小さじ山盛り1
・ジンジャー・パウダー 小さじ山盛り1
・クローブ・パウダー 小さじ山盛り1
・ブランデー(またはラム酒) 120ml~150ml
大きいボールにすべての材料を入れて良く混ぜて、密封性の良い瓶に入れる。使うときまで数週間そのまま冷暗所に置く。
<ペイストリー生地>
・セルフ・レイジングの全粒粉 225g
(または普通の全粒粉 225g+ベーキングパウダー 小さじ3+塩 小さじ1)
・バター (冷蔵庫にいれて冷やしたもの)125g
・冷水 大さじ3~4
・牛乳 少量(ペイストリー生地のつなぎ目のため)
作り方
1 ボールに全粒粉とさいの目に切ったバターを入れ、指先でバターをさっと細かくする。
2 そこに冷水を加え、食用ナイフで生地をきるようにさっと混ぜ、丸くまとめる。(手早く作業するのが、べたつかないコツです。)
3 調理台の上に粉を少量かけ、のし棒にも粉をまぶし、半分の量の生地を2mmくらいの厚さに伸ばす。(これもなるべく手早く作業するのが成功の秘訣です。)
4 パイの大きさと(直径5~6cmくらい)同じくらいのコップで、円く型を抜いていく。(あまり強く押さえつけないように。)
5 切り取った生地をパイ型の1つ1つにあわせてのせ、整えてから、ミンツ・ミートを小さじ山盛り1~2杯すつ生地の上に載せる。
6 ペイストリーの淵に牛乳を少量つけて、同じ形の円く型を抜いたペイストリーで蓋をして、淵をきちんと閉じていく。(型を抜いた後のペイストリー生地は、再度丸めて薄くのばして使ってください。)
7 ナイフで表面に小さな穴を開ける。(蒸気が抜ける穴です。ミンツ・ミートが熱くなって吹きこぼれるのを防ぎます。)
8 刷毛を使って表面に牛乳を薄く塗り、お砂糖(できればデメララ・シュガー : ざらめのような砂糖)をふりかける。
9 このまま冷蔵庫で30分以上冷やす。(焼く前に生地が冷えていることが成功の秘訣です。)
10 オーブンを200度に温め、オーブンで20分程度焼く。(茶色くなりすぎないように気をつけてください。)
*焼きたてが一番おいしいので、温かいうちに召し上がってください。また一度焼いたものは、オーブンで再加熱して食べることをお勧めします。