イギリスのイースター(Easter=復活祭)には欠かせないものと言えば、このホット・クロス・バンズでしょう。
たまごの形をかたどったチョコレート(イースター・エッグ)も多く食べられますが、ホット・クロス・バンズは、チョコレートという嗜好品よりも、パンという食品に分類されるという点で、イースターの主役かなと、個人的には感じています。
(というのも、これといって決まったイースターのご馳走のメニューがイギリスには存在しないからです。)
このホット・クロス・バンズは、とりわけグッド・フラーデー(イエス様が十字架にかけられた日とされる)に食べるのが正統だとされています。
その、まさにクロスが、表面についた、フルーツとスパイスで味付けされた小型のお菓子パンです。
このクロスは単に、魔よけとして、部屋につるして1年の幸運を祈願したりする風習もあるそうです。
また、病人に食べさせると病気が治るとか、ホット・クロス・バンズをのせた船は沈没しない、などとも言われるそうです。
そもそもEasterという名称自体、キリスト教以前の女神 Eostre に由来していて、キリスト教徒に、春のお祭りとして定着したそうです。
ホット・クロス・バンズはとてもイギリス的なもので、その歴史は少なくとも1500年代の後半からという、とても古いものです。
イースターを祝う国々では、スパイスを混ぜたパンをイースター前後に食べる習慣があるそうなのですが、イギリスにおいてはこのホット・クロス・バンズは、伝統的にはグッドフライデー(イースターサンデーの前のフライデー)に食べるもの、と特定されているのが興味深いところです。
というのも、1500年代の後半~1600年代の前半の時代に、グッド・フライデーとクリスマス以外に、ホット・クロス・バンズを売ることを禁止した、という歴史の名残のようです。
(貧民に贅沢品を与えない、というような狙いからだったそうですが、実際は家々の台所で作り続けられていたそうです。)
ここで紹介しているレシピは、John Tovey という控えめなイギリス人シェフのレシピです。
スパイスと砂糖が、控えめになっていますが、その分ドライ・フルーツの味が引き立ちます。
(スパイスの強い味が好きな方は、スパイスを少しだけ増やしてもけっこうですが、シナモンは、入れすぎるとイースト菌の活動を弱めるそうなので、注意が必要です。)
写真のホット・クロス・バンズは、普通の強力粉で作ってありますが、全粒粉を半分混ぜた方がが体にもいいし、より市販のものと違う味になるはずです。
焼き立てはもちろんのこと、半分にスライスしてバターを塗るのもいいですし、トーストしてバターを塗るのがイギリス人の大好きな食べ方のようです。
そのさい、もう少し甘くして食べたいな、という時は、蜂蜜、マーマレードをぬるのがお勧めです。
ホット・クロス・バンズは、コーヒーではなく、絶対的にティーと相性がいいと思います。
材料
(約20cm×35cmのトレイ:約直径5cmのバン15個分)
・イースト と牛乳
A B のうちどれか一つ
A :すぐに使えるイージー・ブレンド・イースト7g
B:普通のドライ・イースト7g+砂糖小さじ1
・牛乳 225ml
・強力粉 315g (全粒粉と普通の強力粉を半分ずつ使うのもおすすめです。)
・ナツメグ 小さじ1/2
・シナモン 小さじ1/2
・砂糖 30g
・塩 小さじ1/2
・ミックス・ドライ・フルーツ 75g
・バター 25g
・卵 1個(半分は生地に入れる、半分は、表面に塗る)
<表面のクロス>
・薄力粉 約大さじ2~3
・水 少々
作り方
1 バターを小なべに入れて溶かして、脇に置いておく。
2 大きめのボウルを2つ用意して、強力粉を約半分ずつに分ける。
3 A のイージー・ブレンド・イーストを使う場合は一つめのボウルにイーストを混ぜ、牛乳を人肌に温めて、混ぜる。
Bのドライ・イーストを使う場合は、牛乳を温め、砂糖をスプン1入れ、イーストを軽く混ぜ、15分くらいおいてから、混ぜる。
4 2つ目のボウルにいれた強力粉に、シナモンパウダー、ナツメグパウダー、ドライ・ミックス・フルーツ、砂糖、塩を入れ混ぜる。
5 2つのボウルを一つにまとめる。
6 平らな表面の上に粉をふり、溶かしたバターと卵半分を混ぜ、生地を約110分間こねる。
(*手にっくっつきすぎる場合は粉を足し、固すぎる場合はぬるま湯を足して調節してください。)
7 丸めて、ボウルに入れ、表面にサランラップをぴったりとかぶせ、生地が2倍に大きくなるまで、発酵させる。:一次発酵。表面のサランラップは押し上げられた空気で、まるく膨らみます。
(*室温が25度前後の場合は約45分~1時間で2倍になりますが、室温が低めの場合は1時間以上置いて様子を見てください。また、温度が高めの場所に生地を置く場合は、温度が高くなり過ぎないように注意してください。)
8 トレイの表面にバターを薄く塗る。
9 平らな表面で、生地を15等分に分け、生地を手のひらと表面でまるめ、トレイに間隔をあけながら置く。
10 固く絞った布を生地全体にかぶせ、そのまま常温で、生地が2倍になるまで置く。: 2次発酵。
(*室温が25度くらいの場合は約30分で2倍になります。この段階での大きさが焼き上がりの大きさになります。)
11 オーブンを220度に温める。
12 小さめのボウルに小麦粉と水少々をいれ、あわたて器、またはスプンで練るようにしっかり混ぜる。
13 ケーキのクリームの絞り器の一番小さいノズルをつけて、生地を入れ、細く出てくるか試す。
14 2倍に膨らんだ生地の表面に、クロスの生地をゆっくりと一度に搾り出す。(上の写真を参照してください。)
15 残りの半分のといた卵を、はけを使って、生地の表面に薄く塗る。(つやだしのためです。)
15 生地をオーブンに入れ、約20分焼いて、全体にはりがでてきた感覚があったら焼き上がり。
(15分後くらいから、表面がこげてきた場合は、アルミホイルをかぶせてください。)
(型のまま約5分冷まし、型から出して金網の上にのせる。)